魚骨石

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ムカデ石というと金生山のウミユリ化石が有名ですが、これはそれとは別の石です。

信濃奇勝録(1834年 天保5年)井出道貞(臼田の人)
刊行は1887年(明治20年

巻三 小県郡之部

魚骨石(きよこつせき)
日向(ひなた)小泉の大日堂ハ相伝延暦年中坂上の田村丸の建立にて天照山山海堂と号別当真言驚覚(きやうかく)山高仙寺此地に蛇河原(じやかはら)といふあり山沢の奥より山海堂の麓(ふもと)二丁余をながれ村の中を横きりて浦野川に入る常にハ水なし暴雨(おほあめ)にハ山々の水落合て川となり小石多く流出此石黒色にして板の如く薄く片(へけ)たる間に蜈蚣(むかで)の状(かたち)有土人むかで石と名つく熟々(つらつら)みるに蜈蚣にあらす魚骨の跡なり諺(ことわざ)に上古岩端(いはばな)に水たゝえて此辺ハうみなりしと云たまたま貝を含(ふく)むものあり

読んで面白いと思ったのは「熟々みるに蜈蚣にあらす魚骨の跡なり」の部分で、こういう文脈は普遍的なんだなと… 魚の背骨を見間違う人はさすがにいないでしょう。

雲根志の頃。江戸時代後期には石にそれらしいひねった名前を付けるのはすでに一般的なことだったようですね。

このむかで石は「博物館列品目録」(明治13年)の「動物化石」に「方言百足石」として載っています。明治7年の万博以前に収集されたもの。ちなみに金生山のものも「方言百足石」として載っています。

博物館列品目録について
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/2001Wada/9.html