写真は上田城公園のメタセコイアと、以前、長野市立博物館の企画展で見た古生代のゴニアタイト(アンモナイト 青海石灰岩)です。
「アンモナイトは中生代の示準化石」という言葉から「アンモナイトは中生代の地層からだけ見つかる」と考えてしまうと、古生代もあるので正確ではないです。新生代の示準化石と言われることがあるメタセコイアも中生代からあります。もしも大雑把でいいなら「中生代を代表する化石」「新生代を代表する化石」とか受け取っておけば良いでしょうか…
Wikipediaの示準化石の説明に「示準化石として用いられる条件」として「現生していないもの」がありました。メタセコイアは現生しているので(この言葉通りに考えれば)示準化石として用いられないことになります。
別所層のペッカムニシキ Palliolum (Delectopecten) peckhami はホタテガイの仲間で当時は冷たい海だったと思われる、という話を聞いたことがありますが、「ホタテガイの仲間」は熱帯の海にもいます。
(現生の Delectopecten (ハリナデシコなど)は深海にいて、タカアシガニなどに付着するものもあるそうです。ペッカムニシキの化石では何かに付着した状態のものはまだ見たことがありません。棲管らしき化石と一緒に見つかることは時々あります。)
自然史しずおか 第54号(2016)
タカアシガニの甲羅に付着する二枚貝ハリナデシコの不思議
http://www.spmnh.jp/news/news54/index54.html
速水格『日本古生物学会144回例会 普及講演会 ホタテガイ類の自然史』(1995) 9頁より引用
ほとんどのホタテガイ類の外層は幅数ミクロンの葉片状ホウカイ石の結晶子からなります.現生の多くのホタテガイ類ではこの結晶子がさまざまな方向を向いて積み重なるので,ベニヤ板のような曲げ応力に強い殻が造られています.ところが,中生代の多くのホタテガイ類や現世でもやや原始的な深海種(ハリナデシコなど)では,結晶子はスレート屋根のように大体規則正しく成長線に直交する方向に並んでいます.これはカンプトネクテス条線に一致する方向であり,このような単純な結晶配列をもつ種にこの条線がよく出現することが分かりました.深海種の殻に透明感があるのも単純な結晶配列に関係があると思っています.
とやまと自然 第14巻 夏の号(1991)
富山湾の深い海底の貝
http://www.tsm.toyama.toyama.jp/_ex/public/nature/index.html
ニシン科の化石が多く見つかるので冷たい海だったと思われる、という話も聞いたことがありますが、多く報告されているのはニシンではなく、ヒシナイイワシ(ニシン科 化石種)です。マイワシ(ニシン科)の祖先の可能性があるとされる魚で、マイワシは南シナ海にも回遊し、ニシンほど冷水域にいるわけではありません。
単純でわかりやすいことが必須な場面では、厳密には違うんだけど…と思いながら不正確な表現を使ったりします。そんなふうにも言葉は不正確… 単純化した材料を使って考察するのは、仮説を根拠に仮説を積み重ねるのに似て、正しさは不明です。答えは正しいこともあるかもしれませんが。
立科町の五無斎保科百助研究会のウェブページが公開されていました。
ただ、まだ暫定版かも… 興味のある方は探してみては。