隆起線と成長線

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写真はニシン科のウロコの化石です。(昨年10月)
魚鱗の模様の要素に、隆起線、溝条、成長線(呼び方は、年輪、輪紋、休止帯、成長輪など)があります。
化石では隆起線と溝条は(露出していれば)明瞭、成長線は比較的不明瞭です。

1枚目の写真(向きは上が頭側)、中央から左右に伸びている線が溝条。(写真の上と下にも短い溝条が数本)
年輪のように見える線が成長線。
隆起線はこの写真では見えていません。

2枚目の写真(上が頭側)、水平方向の黒く見える2本の線が溝条。
同じく水平方向の細かい線が隆起線。
左上から右下方向の(溝条と隆起線に交差する)ぼんやりした線が成長線です。

隆起線を「同心円状」と説明している資料もありますが、実際は種類によって異なり、ニシン科やタイ科では横断(横走)します。(3つ目の図。左が頭側。『別所累層産魚鱗化石について』(1966)より)

スケッチでは隆起線だけで成長線がほとんど描かれなかったり、反対に、成長線だけで隆起線は省略されることがあります。写真でも、上の1枚目の写真のように、隆起線が見えないものがあります。そのため、隆起線と成長線を混同し、混乱してしまうこともあるようです。隆起線か成長線(成長輪)か、注意して見ると良いかもしれません。

関連の記事と参考文献です。
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/34679746
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/34688509
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/35396211
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/35838300

魚類学雑誌
http://www.fish-isj.jp/publication/

魚類学雑誌 1巻3号(1950)
魚鱗の構造に関する術語について
http://www.fish-isj.jp/publication/journal0103.html

魚類学雑誌 1巻4号(1951)
魚類の類縁考察資料としての鱗相の価値
http://www.fish-isj.jp/publication/journal0104.html

魚類学雑誌 2巻4/5号(1952)
Study of the Japanese sardine, Sardinia melanosticta (Temminck et Schlegel). III. On scale-2.
http://www.fish-isj.jp/publication/journal0204-5.html

神奈川県水産試験場研究報告_第5号(1983)
鱗によるマイワシの年齢査定法
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/data_catalog/dataset/env-20151212-002-01

水産大学校研究報告 第53巻 第4号(2005)
マダイとクロダイの鱗に刻まれている隆起線の形成特性
http://www.fish-u.ac.jp/kenkyu/sangakukou/kenkyuhoukoku/53_4.html