上田城の緑色凝灰岩

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上田城 尼が淵の石垣の緑色凝灰岩です。(ブラタモリでは「凝灰岩」と呼んでいました。)
石の縁に並ぶ四角い穴は「矢穴」と言って、石を割るときに「とび矢」というクサビを打ち込んだ跡です。
暗い黄緑色に紫色が混じった縞模様。(溶結凝灰岩の流理構造?)

上田城で見られる緑色凝灰岩類は4種類ほどあります。見比べてみるのも面白いと思います。

・櫓や尼が淵の石垣で使われている縞模様のあるもの
・西櫓石垣の隅角石等に使われている灰褐色で粗粒なもの
・二の丸北虎口石垣の青緑色、暗緑色のもの(塩尻岩鼻と五里ケ峯トンネル工事で出た石を使い平成2年に建造)
・東虎口櫓門前、土橋の両側にある武者立石段の溶結凝灰岩(山口砂防ダム建設時に出た石を使い平成6年に建造)

上田の地石緑色凝灰岩 古墳時代から現代までの軌跡
http://museum.umic.jp/sakuhin/eizou10.html


一般に、いろいろまとめて「緑色凝灰岩」「緑色凝灰岩類」と呼んでいたりしますが、よく見ると、凝灰岩が変質したものか、安山岩流紋岩等が変質したものか、わかりにくい石も多く、そのため、人によって同じ石を「緑色凝灰岩」「凝灰岩」「安山岩」「流紋岩」等と呼んでいることがあります。知らずに話を聞いていると混乱することも。(単に「凝灰岩」「安山岩」等では変質していることが伝わらないので、言葉を加えてもらいたいです。)

尼が淵で使われている緑色凝灰岩の多くは太郎山山麓で採石されたもので、この付近の岩石に関する資料としては、山岸いくま『長野県上田市北方の地質 とくに緑色凝灰岩類について』(1964) 等がありました。

山岸いくま『長野県上田市北方の地質 とくに緑色凝灰岩類について』(1964)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003020138

この論文では、この類の石を「緑色火山性岩石(緑色凝灰岩およびプロピライト)」と呼び、「当地域の緑色火山性岩石は,変質がいちじるしく,ほとんど緑色化し,原岩を正確にしることはできないが,鏡下の組織および鉱物によって,およその推定をおこない,火成活動史を明らかにした」(「まえがき」より)としています。
太郎山山麓の緑色凝灰岩については以下のように書かれています。

太郎山および,この北方の傍陽区にかけては,ほとんどが,この緑色火山性岩石で,一般に淡緑色をおび,石質で硬く,長柱状斜長石を含むことがおおい。ときには,いくぶん丸みをおびた角礫をともなうことがある。肉眼では,溶岩ないしは火山角礫岩状を呈しているが,検鏡結果からは,ほとんど,凝灰岩ないし凝灰角礫岩で,おそらく,石英安山岩質の溶結凝灰岩の脱ガラス化したものとおもわれる。


塩尻岩鼻の緑色凝灰岩(北虎口の青緑色の石)に関する、他の本の記述です。

八木貞助『更埴地質誌』(1943)151頁

1、塩尻村岩鼻附近 内村層凝灰岩 Tuff
 岩鼻のひん岩により貫かれたる凝灰岩にして、岩鼻の断崖をなす淡緑色を呈し緻密やゝ堅牢である。
〔顕微鏡観察〕 (斑晶)斜長石0.1-1粍自形卓状又は半自形曹長石化作用の結果 全部曹長石に変ず。包裹物は多く玻璃、磁鉄鉱、緑泥石等なり。
石英0.1-1粍半自形又は他形状透明なれど、液体包裹物が少くない。稀に双晶が認められる。有色鉱物らしきものは総て分解して光学的等方性の玻璃に変ず。又方解石を生ぜるものもある。
燐灰岩 0.01-0.15粍自形柱状、多色性を有す
(石基)緑泥石玻璃を主とし、斜長石及石英の小片が流状構造をなして配列されて居る。


塩野入忠雄『千曲川中流地方の岩石の産状と観察』(1989) 94頁

(45 上田市塩尻岩鼻 火山岩質緑色凝灰岩)
 肉眼的には,淡緑色で,緻密,変質しており非常に堅く,溶岩ないし凝灰角礫岩に見えるところが多い。ことに緻密な基質の中に斑晶状に斜長石の自形の結晶が散在するなど,凝灰岩としては特異的な部分も多い。
 顕微鏡観察では,斑晶状に斜長石・石英の結晶がある。斜長石は粒度0.2~1.0mm,自形~半自形で柱状,曹長石化作用をうけている。包裹物にガラス・緑泥石・磁鉄鉱をもっている。石英は0.1~1.0mm,半自形~他形である。石基状の基質は緑泥石の微晶およびガラスが主でその中に斜長石の小片が流状に配列する。
 この検鏡のサンプルは,その溶岩質の部分であるが,その他に凝灰岩質の部分もあり,これらを一括して火山岩質緑色凝灰岩とする。