塩田平の伝説

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写真は、ため池フェスティバルのとき、入り口に置いてあった民話関係のイベントのチラシです。
こういうのも面白く貴重とは思うのですが、もっと基礎的な調査や研究はないのかな、とも思います。地域にどんな伝承があって、どのように伝えられ、どう変化してきているか。土台があやふやだと、その上で何をしてもふわふわした感じになってしまいます。大変な仕事で簡単ではないでしょうけど…

塩田平の伝説を比較的多く集めた資料としては『しおだ町報 昭和36年10月5日』(1961)の記事や『信州の鎌倉 塩田平の民話』(1993)があります。ただし『しおだ町報』の記事は題名のみで、内容は不明です。
それぞれ102話と101話で、重複は40話ほど。(『しおだ町報』にだけあるのが102話中57話、『塩田平の民話』にだけあるのが101話中59話。題名から内容を推測したものがあるので、正確ではありません。)合わせると約160話です。

例えば、地名、寺社、様々な人工物・自然物には由来話があり、言い伝えがあり、災害の話、人物の話、行事・冠婚葬祭の話、話者の個人的な思い出話、噂話等があったはずです。不確かな想像ですが、それら無数の話の中から、偶然に取り上げられ脚色され文字化された話が新聞等に掲載され、さらにそれがチイキのムカシからの伝承として伝説集等に収録される、というような経緯があったのではないかなと思っています。なまじ、そうした話が多かったために、基礎的な調査が行われなかったのかも… すべて失われるよりは、はるかにましではありますが。


『しおだ町報 昭和36年10月5日』「紙上講座 塩田平の伝説」東川多寿男
 塩田平には昔からの伝説が、数多く残されている。文献にのせられているものだけでも四十五話、その外村々に伝えられているものを合せると、百話を越すであろう
 今主なものをあげてみると、別所では、観音信仰にともなう、北向山観音の出現、霊験話、鏡池、温泉湧出に関する大師湯、七久里の湯、大湯、久我湯、玄斉湯、石湯のもの、また別所雨乞信仰の岳ののぼり、日月の宮、西行法師の戻橋、縁結び熊野権現、岳の宮釈迦見坂、等がある。
 野倉には大明神の主、おかんが池、赤地蔵と雨乞、穴平の一つ火 送り山犬、女神岳の天狗、朝日夕日の長者、さいの河原、千野源三左衛門、剣客曽根栄治の話がある
 山田には、石の成長伝説と知られた蛇二郎社、下ノ郷のお宮を造ったという槻木の大欅。海野小太郎の駒形橋。手塚には、縁切立石 菊水の水、元木の地蔵、山田屋敷 舌喰池の人柱、皇子塚、竜王泉、万寿姫、手塚太郎出陣の駒形、新町には王子塚の氷上王がある。
 前山には雨乞伝説の竜王山中禅寺、三輪山伝説で名高い小泉小太郎、保科の稲荷と代官屋敷、古墳直刀のたたり、諏訪社の古刀、北条の木像、銀杏の大木、ちがい石 弘法山、市神、硯水、北条の亡霊等が残されている。
 柳沢では、夜なき地蔵、清竜寺の梅、古やしきと清水、はぶたいの出湯、石神には吉沢の葦、石神布留社、並居の清水、塩田柿、大六天、安曽の森の話があり、鈴子には来光寺、御所畑、平井寺には二軒在家とたか山の湯、殿城山平井寺、峠の熊野権現の話が伝わっている。
 奈良尾町屋中村には、富士岳の千駄焼、弥勒仏塔、ほうそう神、かぶとかけ松、こなべ立ちの湯、白鬚社、姫宮、善光寺、山吹の墓 五光寺、信玄道、長門やしき
 下組には、源方の孫左衛門、久保の猫山、上官、鴻ノ巣の話がある
 下ノ郷には、ばくち岩、古やしき、七在家、他田塚、神宮寺六坊 生島の神領御柱
 以上のほか中塩田地区にも多く残されている。本郷の袈裟供養、五加のざる水、甲田池の河童、絵堂の雨乞地蔵、小島の小幡やしき 保野の原理兵衛の長者伝説、縁切市坂、祇園、中野の西行塚、舞田の焼餅石、ひょうたん軍記、八木沢の道祖神、天神様、峯やしき、四つやの泉、等をあげることができる。
 これらの伝説の中には、塩田の発展の経過をうかがうことができるもの、また生活や信仰につながるものが多い。


『信州の鎌倉 塩田平の民話』上田市塩田文化財研究所編(1993) (101話)

旧別所村(22話)
北向観音出現のはなし, 常楽寺鏡池, “鬼女紅葉”ものがたり, 維茂の将軍塚, 善光寺地震北向観音, 愛染明王の怒り, 北向山の女夫杉, 七久里の里, 別所の出で湯, 石湯発見のはなし, 湯に入った木像, 大師湯の大入道, 木曽義仲と葵の湯, 片目の傷ついた薬師さま, 縁結びの美欄樹, 雨乞いと岳の幟, 牛と馬の競争, 西行の戻り橋, すばこの神さま, 大明神岳の主, 狐の嫁入り, 七久里の里十八景

旧西塩田村(33話)
塩田の海, 独鈷山, 弘法山のちがい石, 前山寺の水竜さま, 前山の市神さま, 龍光院のお開基さま, 龍光院の月餅水, 鎌倉街道, 塩田城下の町並み, 前山の「おたや」, 塩野神社の御神木, 中禅寺の槇の木, 中禅寺の弘法大師の贈りもの, 甲田池の河童, 十人村のはなし, 新町の王子塚と手塚の皇子塚, 新町の王子神社の御神木, 新町の大神楽, 元木の地蔵, 手塚の太郎駒の足形の橋, 唐糸と万寿姫, 手塚の八幡さま, 舌食池の人柱, 大行満・願海, 山田の蛇地蔵と荷石さま, 山田の郭公鳥, 池づくりのはなし, 西前山のから池, 小泉小太郎, 野倉の“でいらぼっち”, 野倉のぎっと左衛門と耳の神さま, 野倉の長者, 野倉の赤地蔵さま

中塩田村(24話)
本郷の泥宮と旅人, 本郷の諏訪畑, 本郷のざる水, 上本郷の要石, 本郷のしょうずか婆さん, 塩田八郎高光の館跡, 五加の灯ろう祭と大相撲, 五加の絵堂の地蔵, 塩田平の雨乞い, 五加の大石灯ろう, 中野の西行塚, 西行法師の袈裟供養, 中野の末木の薬師, 信州の「学海」, 小島大池の猪, 下小島の大日堂, 保野の祗園祭, 保野の長者, 黄金の瓢, 舞田峠の送り犬, 舞田峠の焼餅石, 舞田の虚空蔵堂, 八木沢の木曽義仲供養碑, ヤマンバの木

旧東塩田村・旧富士山村(22話)
下之郷の他田塚, 生島足島神社の願文のはなし, 鴻の巣, 久保の猫山観音堂, 町屋の巴・山吹の五輪塔, 信玄兜掛の松, 砂原峠の夫婦岩, 大円寺の火定さま, 奈良尾の大姥さま, 奈良尾の弥勒仏塔, 鈴子の大姥さま, 平井寺の狐の遊び場, 平井寺の駒形さま, 平井寺の夫婦道祖神, 西光寺のはなし, 久保の大力孫兵衛, 石神の大六の欅, 石神の鶏岩, 吉沢城の片葉葦, 柳沢の御神木, 柳沢の金焼地蔵, 柳沢の背長地蔵と龍光院